大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

山口地方裁判所 平成2年(わ)161号 判決

本籍

山口県徳山市大字四熊二七一九番地

住居

同 市河東町六番六号

会社役員

近間淑子

昭和一三年一一月七日生

右被告人に対する所得税違反被告事件につき、当裁判所は、検察官大坪弘道出席のうえ審理して、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金一七〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二万五〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定のした日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、山口県徳山市河東町六番六号において、「アサヒ薬局」の名称の医薬品小売業及び「東洋鍼灸院」の名称の鍼灸業を営んでいたものであるが、夫である近間勝史と共謀のうえ、売上の一部を除外するなどの方法により自己の所得税を免れようと企て、

第一  昭和六一年分の実際の所得金額は五三六五万一六八四円で、これに対する所得税額は二三九三万一四〇〇円であるにもかかわらず、昭和六二年三月一二日ころ、同市今宿町二丁目三五番地所在の徳山税務署において、同税務署長に対し、みなし法人課税方式を選択して、昭和六一年分のみなし法人所得金額が三六六万八八〇〇円で、総所得金額が一二二九万九二四〇円で、これに対する所得税額が一四六万八〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により所得税二三四六万三四〇〇円を免れ

第二  昭和六二年分の実際の所得金額は四九七八万二六三一円で、これに対する所得税額は一八九六万二六〇〇円であるにもかかわらず、昭和六三年三月一〇日ころ、前記徳山税務署において、同税務署長に対し、前同課税方式を選択して、昭和六二年分のみなし法人損失額が四九三万六七三三円で、総所得金額が一二三七万円で、これに対する所得税額は、すでに源泉徴収された税額を控除すると四一万五四四〇円の還付を受けることとなる旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により所得税一九三七万八〇〇〇円を免れ

第三  昭和六三年分の実際の所得金額は六五〇四万九五九三円で、これに対する所得税額は二七九三万一四〇〇円であるにもかかわらず、平成元年三月一三日ころ、前記徳山税務署において、同税務署長に対し、前同課税方式を選択して、昭和六三年分のみなし法人損失額が二二八万〇二九九円で、総所得金額が八〇一万七一〇〇円で、これに対する所得税額は、すでに源泉徴収された税額を控除すると二九万〇二二〇円の還付を受けることとなる旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により所得税二八二二万一六〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  第一回公判調書中被告人の供述部分

一  被告人の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する質問てん末書一一通

一  近間勝史の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する質問てん末書六通

一  小川隆則の検察官に対する供述調書

一  徳山税務署長作成の「所得税の青色申告の承認取消し通知書」と題する書面

一  小川隆則作成の「脱税額計算書説明資料」と題する書面

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官小川隆則作成の脱税額計算書(昭和六一年分)

一  押収してある六一年分の所得税確定申告書(平成三年押第三号符号1)

判示第二の事実につき

一  大蔵事務官小川隆則作成の脱税額計算書(昭和六二年分)

一  押収してある六二年分の所得税確定申告書(平成三年押第三号符号2)

判示第三の事実につき

一  大蔵事務官小川隆則作成の脱税額計算書(昭和六三年分)

一  押収してある六三年分の所得税確定申告書(平成三年押第三号符号3)

(法令の適用)

罰条 所得税法二三八条一項、二項、刑法六〇条

併合罪加重 刑法四五条前段、四七条本文、四八条二項(懲役刑につき判示第三の罪の刑に法定の加重)

労役場留置 刑法一八条

懲役刑の執行猶予 刑法二五条一項

(裁判官 山森茂生)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例